絶滅危惧種なのに食べてもいいの? 今さら聞けない「ウナギ」の秘密
2025年7月19日と31日は「土用の丑の日」。
「土用の丑の日」とは土用の期間中の丑の日を指し、土用とは、立春、立夏、立秋、立冬それぞれの直前の約18日間のことを言う。
その中でも夏の土用の丑の日は鰻を食べる習慣があり、鰻専門店や飲食店、スーパーなどには鰻を求める人が殺到する。
そのことからも鰻は夏の食べ物と思われがちだが、本来の旬は冬。
天然の鰻は冬眠前に栄養を蓄えるため、秋から冬、10月から12月頃が最も脂がのって美味しいと言われている。
一方で養殖鰻は一年中楽しむことが出来るが、「土用の丑の日」に合わせて養殖されているため、6月から8月が旬とも言われている。
本来は冬が旬の鰻がなぜ夏に食べられるようになったのか。古くは奈良時代から夏の暑い時期を乗り切るために、
栄養価の高い鰻が食べられていたという記述も残っているが、「土用の丑の日」に鰻を食べるという習慣は、
一説には夏に売上が伸び悩む鰻屋からの相談を受けて、
江戸時代の蘭学者平賀源内が「本日丑の日」と書いた看板を出すよう提案したところ、大繁盛したことがきっかけとされている。
いずれにせよ、鰻にはビタミンA、B1、B2、D、Eやミネラルなど、身体に良いとされる栄養素がたくさん含まれているため、
鰻を食べれば免疫力向上や疲労回復、骨や血管の健康維持、集中力や記憶力の向上、
さらには美容効果など様々な健康効果をもたらすことが期待できる。
意外と知らない鰻の生態とは
意外と鰻のことを私たちは知らない。
突然だが、鰻がどこで生まれるかをご存知だろうか。鰻は河川や湖で育つ生き物だが、産卵は海で行われる種が存在する。
鮭や鮎は海で育って河川で産卵するが、鰻はその逆で「降河回遊魚」と呼ばれている。
鰻は数年のあいだ河川や湖で過ごした後、海を目指して産卵する。
そして海で生まれた鰻はある程度の大きさまで海で育ち、その後また河川に戻って数年間過ごすというライフサイクルになっている。
日本の河川に生息する鰻はニホンウナギとオオウナギの2種類だが、江戸時代から親しまれてきた魚でありながらも、
産卵場所が判明したのは1991年と最近のこと。
詳細な場所が東京大学海洋研究所によって特定されたのは2005年で、日本から約2,500kmも離れた西マリアナ海嶺付近と考えられている。
国内で消費されるニホンウナギのほとんどは養殖だが「完全養殖」ではない。
鰻の養殖はニホンウナギの稚魚である天然のシラスウナギを採捕し、養殖池で育てて出荷している。
近年では鰻の養殖技術も格段に進化を遂げており、天然資源に依存しないウナギ養殖技術で商用利用を目指している。
鰻は大量消費されるべきものなのか
近年では鰻のチェーン店をはじめ、色々な場所で鰻が売られている。
ニホンウナギは2013年に環境庁のレッドリストに、また2014年には「IUCN(国際自然保護連合)」のレッドリストに
それぞれ指定されている。ニホンウナギが絶滅危惧種となった背景には、鰻の生息する環境の変化や異常気象、
そして私たち人間による鰻の乱獲がある。
前述するように鰻は天然、養殖問わずとも100%天然資源に頼っている。
絶滅する可能性が高いと指摘されている天然資源を大量消費している日本は、鰻を守ることに一定以上の責任が問われている。
しかし私たちが日々食べている鰻はその責任が果たされたものとは限らない。
シラスウナギを採捕するためには各都府県から特別採捕許可を得る必要があり、採捕した数量は都府県に報告する義務がある。
しかしながら養殖場に販売されたシラスウナギの量と、特別採捕報告の量とでは毎年大きな差異があり、採捕量の過少申告が起こっている。つまり無報告や密漁によるシラスウナギが一定数あるということだ。
かつて鰻は鰻の専門店でしか食べられなかったが、今はスーパーやデパートの量販店で鰻の蒲焼きが売られるようになり、
ファミリーレストランや牛丼店、弁当店などでも鰻がメニューに加わった。さらに安価な鰻チェーン店も台頭するなど、
専門店で食べるものであった鰻は、いつしか低価格で大量消費の食材になってしまった。果たしてそれで良いのだろうか。
鰻をいつまでも美味しく食べるために消費者である私たちが出来ること。
それはやはり現在のような乱暴な食べ方を見直し、鰻は専門店で大切に食べるようにすることだ。
私たちの身勝手により安さや手軽さばかりを追い求めて、
天然資源を無駄に消費することや江戸時代から続く日本の食文化を絶やしてしまうことは決して許されることではない。
鰻の事を学んで食べて再確認!!